(二)この世界ごと愛したい
シオンであれトキであれ、総司令さんの息子に違いはないとエゼルタ王は悟った。
そんなエゼルタへ、私の合図があれば五万の兵を進軍させろと指示を受けているアレンデール。
「何やってんだ、ルイ。」
「リンの服。珍しく指定されたんで、準備してる。」
「…初めて見るドレスだ。」
「リンがセザールに嫁ぐ時に、王妃がリンに贈ったんだ。お前が寝てたから知らねえだけ。」
「はあ!?何でリンはその悪夢のドレスを選ぶんだよ!?」
「俺が知るかよ。」
お懐かしい。
セザール嫁入りの際の純白のドレス。
あの時、阿呆なセザール前王の阿呆な提案によって返り血を浴びたドレスは、今は汚れる前より寧ろ綺麗。
るうが頑張ってくれたんだろう。
「こんなの着て行ったらリンが食われる。」
「マジで気味悪いくらい可愛かった。」
「俺も見てえ!!!」
「無理。ここの予定空けるために俺は仕事して来たんだよ。お前はその間食うか寝るか泣くかしかしてねえだろ。そのツケだ。」
私に会えない寂しさから、また泣いてしまったらしいハル。
「変わってくれ!頼む!」
「嫌だ。」
同じやり取りを、この二人は一体何度繰り返したことだろう。
良く飽きないなと感心してしまう。
「てかエゼルタに五万って、招待されただけなのにリンは戦争でもする気か?」
「…さあな。」
「面倒なことにならねえといいけどな。」
「…シオンがいる。リンに危険があっても、アイツがどうにかする。お前はとにかくリンから目を離すな。」
るうはハルの言葉に少し驚く。
仲が悪く嫌いなものだとばかり思っていたハルとシオン。実際は少し違うらしいと知る。