(二)この世界ごと愛したい




開戦してみれば、一箇所が群を抜いて光る。


セザールの前線。



敵は疎か、不用意に味方さえも近付くことが出来ないほどに力強く光輝く。




「た、隊長…やべえ。」


「俺等居る意味あるのか?」



矛の一振りは塵風を切り裂き、敵を薙ぎ払う。


調子絶好調のアキトは、止まることを知らずにトキの指示通りただ前進する。



快進撃を魅せたアキト軍を前に、ソルは成す術もなく戦場に散る。





「隊長ーっ!!!」


「あー?」


「トキさんがとりあえず止まれって言ってます。」


「はあ?アイツが進めって言ったんだろうが。」



思わずトキがストップを掛けてしまったのは、この成長を見誤ったから。


もうアキト軍の後軍は着いて行くのがやっとの状態。




「後ろが来てないんで、とりあえず止まって戦え…だそうです。」


「…ったく。」



急げと言ったり止まれと言ったり。


しかしトキの指令に背くことは出来ないアキトは、ここで足を止めて。



その場の敵さえ一網打尽。


後軍が追い付き、陣形を整える前にアキトは一帯を制圧してしまう。





「アキト。」


「おいトキ、お前急いでんだろ。止めるなよ。」


「…もう止めない。」



トキは、アキトにもう止めないと言う。


もう見誤らないと決めた。もうこのアキトと言う将軍の力を虚心しないと決めた。




「桜花爛漫…か。」


「はあ?」


「リンがアキトのことそう言ってた意味が、今頃分かった。」



桜の花が最も美しく咲く情景のように。ただ綺麗に、光輝く様だと。


私が見た未来を、トキは目の当たりにしている。





「着いて行けてないのは俺だった。ごめん。」


「…怖い。謝るなトキ。何でもするから飯抜きと罰金は止めてくれ。」


「その言われようにムカつくけど。じゃあとりあえず、もう止めないから。アキト、走れるだけ走っておいで。今度はちゃんと追い付く。」


「ああ。お前はただ、俺を勝利へ連れて行け。」




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