(二)この世界ごと愛したい



そんなことは知らず。


私はエゼルタ出発前に、再度訪れたい場所があり。



今日はパルテノン王都を一人離れて、ふらりと一つの目的地に降り立った。






『…巫女の子よ。』



カイにいつか連れられた、神殿。


別に祈りに来たわけではなく。これからの戦いの必勝祈願をするわけでもない。




「ご無沙汰ですー。」


『祈りを捧げよ。』


「捧げないけど、教えて欲しいことがあって来たの。」


『……。』



祈らないと分かれば無視ですか。


神とは心の狭いものですね。




「私に勝手に力を付与したでしょ。」


『更なる力を望むか。』


「そうじゃなくて。これって私が持ってた力を単に増強したって認識で合ってる?」


『…左様。』



それを、確かめに来た。


ムカつくし。納得いかないし。やっぱり神様なんて好きになれない。






「…やっぱり、あれは私の力じゃなかったんだね。」



その答えを知るのが、ずっと嫌だった。


戦で負けないこと。戦いで人より少し優位に立てること。全部全部、私の力じゃなかった。



…それを、認めたくなかった。




でも、はっきりと神様本人に認められてしまった。それは神の力の賜物だと。






『祈りとは、夢だ。』


「……。」


『望むなら永遠に、覚めない夢を与えよう。』


「…馬鹿にしないで。」



今はまだ、夢で終わらせるつもりなんてない。


神の力も、火龍の力も、こうなってしまえば全て私の力だ。





『力を与えて泣かれるのは初めてだ。』


「っ…。」





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