(二)この世界ごと愛したい
神になんて分かって貰わなくて良い。
神が人間に与える力。
それは決して膨大な力とは言えない。
ママは守護の力だったらしい。己を護り、周りの人を護る。そんな優しい力。
ハルは風。その気になれば風向きを自在に操ることさえ出来る。そんな綺麗な力。
アルはたぶん、まだ力が目覚めていない。
そして、巫女の一族が共通して出来るのは、加護を与える力。
神様と共同して何かを護る力。無限には護れないが、力を持った者の容量内で加護を誰かに与えることが出来る。
そんな私にはその加護が与えられているのだと、カイとここに来た時に分かった。
望まない力を与えられたから、気付いた。
「何で…私にこの力を?」
『付与する力を決めるのは己。その力を欲したのは他でもない自分自身だ。』
…そうか。
私の力は、私が望んだことなのか。
てっきり神様の贔屓があって、勝手に選ばれたのかと思っていた。
「醜い力だね。」
『…確かに。未だ嘗てその力を選んだ者はいない。』
「…だろうね。」
ここに来てから明らかにその力は増強されたもので、思わず確かめに来てしまった。
確かめたら確かめたで、悲しくなった。
だけど、立ち止まることは出来ない。下を向いてもいられない。
いつもと同じ。利用出来るものは全て利用してしまえばいい。自分の力に変えてしまえばいい。
「自分で…得た力だと思ってたの。努力らしい努力なんて確かにしてないけど。それでも、信じたかったの。」
『……。』
「絶対立ち直るから、もう少し泣いててもいい?」
神様は返事の代わりにふわりと私を風で包む。
それは大好きなハルの風のようで、私は余計に溢れる涙が止まらない。