(二)この世界ごと愛したい
街に行く時間を捻出するためには、アキトとサクの稽古を落ち着かせるしかない。
まあ、サクに関しては元より不安はないので。
「私の楽しみはアキトにかかってる!」
「は?」
「くれぐれも稽古は真剣に取り組んでね!?」
「今日も真剣にやってただろ!?」
明日はボール遊びからアキトには違う武器で挑んで貰おうかな。
時間短縮のために色々試してみよう。
「よし、そうと決まれば明日に備えて早く本読もう!」
「いや寝ろよ!?」
「お昼寝しちゃったからまだ眠くないんだもんー。」
そんなわけで、寝台に横になり本を開く私の隣にアキトも横になって。
もう特段邪魔するつもりもないアキトは静かにしている。
「……。」
「……。」
眠くなるその時まで、ずっと読んでいたい。
と思ったんだけど、もう隣から穴が開きそうなくらい私を見つめている視線が煩わしい。
昨日のトキもこんな感じだったけど、トキと違って…何と言うか。視線に混ざっている熱が凄い。
「……。」
「…私の負けだね。」
私はパタンと本を閉じる。
その熱を帯びた視線に、全然集中することが出来なくなってしまった。
「大人しく寝ますー。」
「…ああ。」
明かりを消すと、また月明かりが差し込む。
「おやすみー。」
「おやすみ。」
何だかアキトが大人しい。
明日はまた朝からボールやって、お昼からは何しようかな。私も火龍の修行したいけど何せ膨大すぎる力だから、居場所が割れるのが難点。
私は目を閉じながらも稽古の段取りを考える。
「……。」
私は目を閉じているのに、お隣さんは未だに私を見ている…気がする。
このまま寝たと思わせておこう。