(二)この世界ごと愛したい
私が来た時同様変わらず薄暗い室内。
そんな中、未だに窓辺に座る私。
「っ…。」
アキトは思わず息を呑む。
一見幻想的にも見える景色。
でも月明かりと同化しそうなほど儚いその姿に、ハナちゃんが怖がるのも無理はないと悟った。
「アキト?おかえり?」
「…お前こんな暗がりで何してんだあ?」
「ちょっとお月見タイムです。」
「さっさと明かり付けろよ。」
アキトが明かりを付けて。
途端に明るくなる室内に私は目が慣れず目を細める。
「…ちゃんといるな。」
「え?」
「なんでもねえよ。明日も早えんだからさっさと寝ろ。」
「あーそうだった。しかも明日は時間外労働が二倍だった。私全然遊べてないっ!」
思えば予定と全然違う!!!
街に行って豪遊するはずだった当初。
蓋を開けてみれば戦の助力からスタートして、翌日から稽古の仕事。確定で残業三昧になる予定。
「…あ、そうだ。俺も街に行きてえんだ。」
「私はいつでも行きたいー。」
「こないだ行った商業の街の少し先に一際でけえ街がある。纏まった時間出来たら連れてってやるよ。」
「絶対行きたい!!!」
新しい街!
しかも一際大きいと聞いたら行きたくない理由がない!!!
こないだ本屋さんなかったから次はあるといいなーとか呑気に考えている私。