(二)この世界ごと愛したい
どっちが先にするか聞くとサクが手を挙げたので、希望通りサクから稽古開始。
アキトはその間また武器を振っている。
「あーサクごめん。傷まだ痛む?」
「問題ないっす!もう治りました!」
「トキに報告するの忘れてたから後で私から伝えて謝っとくね。」
「リンちゃん気にしすぎですって!」
稽古してる最中でも話ができるほどサクには余裕ありそう。
…やっぱこの子優秀だ。
「サクは呑み込み早いねー。」
「先生がいいんで!」
「褒め上手ー。ハナちゃんが羨ましいよー。」
「リンちゃんもおだて上手っす。」
いやもうサクって完璧じゃない?
顔良いし。優しいし。強いし。将軍だし。性格も良いし。女の子に対する気遣いも素晴らしい。
「私もし次結婚するならサクみたいな人がいいかも…っておーい!?」
お互い褒め合ってる中。
私が漏らした一言にサクが珍しく動揺して握っていた剣から、手を離した。
その剣は振り切っている途中の剣。
勢いよく私の左腕を掠める。
「り…リンちゃんっ…!」
「うんうん。私もそうだったから気持ちわかるよー。」
「ご、ごめっ…うぶっ!!!」
謝ってくれているサクを蹴り飛ばしたアキトさん。
「お前等二度と剣持って喋るな!!!」
「「…すみません。」」
アキトが珍しく怒鳴るので。
素直に謝る私とサク。
「ハナ呼んで来い!!!」
「はいっ!」
手当ての道具とハナちゃんを連れてくるため、サクが一時稽古を中断して駆け出した。
そして私に向き直る怒ったままのアキト。
「大袈裟だって。」
「ああ?」
「こんなの舐めてたら治りまーす。」
「……。」
ただ、場所が悪かったのは否めない。
まだ服の下で露見していないが、火龍の稽古で私が自傷した傷と同一部位。
古傷も相まって見た目はたぶん最悪だ。