(二)この世界ごと愛したい
「…せっかく綺麗なのに。」
「え?」
「あ?…ああ!?別に知らねえけどな!?」
何故か狼狽え始めるアキト。
しかし、残念ながら私はこの腕だけではなくもう身体中傷だらけでございます。
「…綺麗な子がいいなら私はやめといた方がいいよ。」
私は一番見せやすい肩の矢傷をアキトに見えるように羽織をずらす。
「至る所こんなのばっかだから。」
凡そ、普通に平和に暮らす女の子の身体ではない。
別に後悔はないし悲しくもない。
これは私がちゃんと戦った証。
何かを守った証。
「…名誉でしょ?」
アキトの真似をしてニヒルな感じで笑ってみせると、アキトは目を細める。
「お前の傷なら眩しく見えるもんだなあ。」
「眩しさは分からないけど、男の人はやっぱり綺麗な子を綺麗なまま守るべきだよ。」
そう言う意味では、こんな傷物を当てがわれてレンは意外と外れクジを引かされた気がする。
そんなことを気にする人じゃないけども。
「お前が多めに傷を負ってるのはラッキーだ。」
本場のニヒルな顔が発動。
「俺が全部治してやれる。」
「へ、変態っ!!!」
先程舐められた左腕の感触が蘇り、ようやく落ち着いた私の熱がぶり返す。
「何を想像したか知らねえけどマジでお前シオンの前でそれやるなよ?」
「それってどれ!?」
「それはそれだ。」
意味不明です!!!
アキトとくだらないことを言い合ってる内に、サクがハナちゃんを連れてやって来たので。
私は捲られた袖をそっと戻す。