(二)この世界ごと愛したい



何を言ってるか分からない。



思わず首を傾げる私に、トキの部屋にある模型を指差すシオン将軍。






「模擬戦で良ければ。」





え。


え。




…マジ?







「い、いいのっ!?」


「…近いです。」


「本当にいいの!?そんな贅沢なことあり得るの!?」


「だから近いって。」




私は勢い任せにグイッとシオン将軍に迫る。



模擬戦とは言え、こんなすごい将軍の軍略をこんな間近で見られるの!?






「う、嬉しすぎてどうしよう。」


「…さっきまであれだけ嫌い嫌いと言っておきながら。」


「ハルを狙ったりしなきゃそんなこと思わないもん。どうしよう本当に夢みたい。」


「そんな大したこと出来ませんけどね。」




淡々と模型に駒を並べながら至って冷静なシオン将軍と、テンション爆上がりの私。




憧れの人。


ずっとこうなりたいと思ってた人。





「…相手、お願い出来ますか。」


「感無量です!!!」




ずっと嫌いだったのは、この人なら僅かな可能性でハルを討つことが出来るのではないかと危惧していたからで。


私がそれをさせる道理はないとは言え。




それほど危険視していた。


逆に言えば、それほどこの人の力を畏敬していた。





「泣きそう。」


「は?」


「信じられない。」


「…はい、一手打ったので次どうぞ。」




トキの部屋で模擬戦を勝手に始めた私たち。


もう畏れ多いし幸せだし感動さえしていますけども。




勝手にごめんね!トキ!!!






「嬉しすぎて全然頭回んない。」


「…あんまり相手にならないなら俺は寝ます。」


「えー!頑張る頑張るっ!」




とりあえず集中!!!


こんな機会滅多にないんだから!!!





「……。」


「……。」




真剣に駒を動かし続ける。


ちゃんと考えてるし、ちゃんと相手の意図を読もうとしてる。





…それなのに。





「強すぎ!何これ!卑怯っ!!」


「貴女がやれって言うから…。」


「ちょ、ちょっと待って!?なんでさっきこの駒動かしたの!?」


「…ただの揺動。」




こんな初歩的な策に嵌められた…!!!




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