(二)この世界ごと愛したい
ディオンとの戦の際に、この辺の地図は大体頭に入れていた。王宮までは迷わず行ける。
しかし、私が今目指すのは西の戦場。
とりあえずアキト軍三万を先に解放してあげて、城に帰してあげようと思っている。そこから王宮に行ってトキを連れて南の戦場に行けば効率が良いと判断しました。
しばらく飛び続けて、西の戦場を捉える。
「意外と敵兵少ないな。」
有り難いことだ。
しかも、平地の戦いにしては広くもない場所なので。私の炎だけで網羅できる。
「さっさと終わらせようー。」
私はその場に急降下。
出来るだけセザール兵に危害は加えぬように、気を配りつつ戦場に降り立つ。
「なっ…アレンデールの姫だと!?」
「何故魔女がここにいる!?」
…だから魔女はやめてくれ。
「とりあえずさっさと退いてくれるかな。私寝坊したから時間ないんだよねー。」
横幅目一杯。
炎を惜しまず展開。
これで私の前後で敵味方を分離。前だけを押し返せばいい。
「アレンデールを追われセザールに下ったのか!?」
「残念。違いますー。」
「では何故貴様がこの戦場に現れたのだ!?」
私が、ここにいる理由か。
セザールに下ったわけではない。
たった一つの約束を果たすためと、これから大いに活躍する一人の将軍の行く末を、見てみたいだけ。
私の新たな道の先でも、きっとその姿は光り輝くから。
「この軍が、通行の邪魔だっただけだよ。」
私は展開した炎を、ただ前に進める。
それだけで敵は退かざるを得ない。
ただ、国境まで押し戻す。