(二)この世界ごと愛したい
大丈夫だよと。
答えようとしてピタリと止まった私。
…待ってくれ。
隠れんぼの最中だったんだっけ。
「……。」
「……。」
「…大丈夫かって聞いたんですけど。」
「…大丈夫、です。」
参加者に見つかってしまいました。
ただ参加してるのか怪しいです。この人。
もう寝台に転がって、月明かりに照らされているこの狼さん。寝る間際だったよね。
「し、シオン隠れんぼ参加してたっけ?」
「全然。」
「じゃあセーフか。」
「参加権は貰ってましたけど。」
参加する気ないくせにそんなことは覚えてんのか。
それにしても、この人は本当に月の光がよく似合う。銀色の髪が映えてより輝く。
「…さっきはごめんね。」
「俺よりまずトキに謝りに行ったらどうですか?」
「うん。それはちゃんと謝るけど。」
「…一緒に行きましょうか?」
ほらね。
こんなにも、優しい人。
「…なんか悲しくて。」
「……。」
「シオンが優しいの、みんな知らないのが悲しくて悔しかったの。だから一緒に遊んだら、少しは仲良くなれるかなって…思ったんだけど…。」
「…はぁ。」
シオンは転がった身体を起こして、私に近寄る。
私がへし折った板の破片がまだ頭や肩に乗ったままだったのをパンパンと払ってくれて。
「俺、別に優しくないんで。」
「…嘘つき。」
「嘘じゃない。他人に興味も無ければ群れたいとも思わない。誰に好かれなくてもいいし誰も好きになれない。」
嘘を言ってるとは思えない目で。
そんな悲しいことをサラサラと言って退けるこの人は、一体今までどんな風に生きて来たんだろう。
私と出会ったあの頃も…そうだった?
それとも私と出会ったせいで…そうなった?
「家族も自軍の人間も俺にとっては全員同じただの人間で駒でしかない。」
「……。」
「貴女の目の前にいる俺がどれだけ優しく見えてるかは知らないけど。」
「……。」
そう言えば、トキが今のシオンは見たことがないシオンだって…言ってたかもしれない。
でも、私に優しくするのはどうしてだろうと考えてすぐにまた思い出した。思い出したから、考えるのを止めた。