(二)この世界ごと愛したい




「…私が怖い?」


「……。」


「そんなに優しくしなきゃいけないほど、私に嫌われるのがそんなに怖い?」


「…その癖止めた方がいいですよ。」




勝手に人を読んでしまう癖。


ハルにも止めろって良く怒られたけど。



…今は、止めたらダメだと思った。






「…もうこんなに想ってもらって、こんなに助けてもらって。私がその恩を返さないような無礼者に見える?」


「……。」


「トキのこと、私は何が何でも守り通すつもりだけど。ちゃんと気付いてる?」


「…気付くって?」




定められた運命も、張り巡らされた陰謀も。


私には何も関係ない。







「私、シオンのことも絶対見捨てたり出来ないよ。」


「……。」


「一手目の策、シオンが練れないなら私にも考えがある。」


「…何する気ですか。」





「相手次第だからはっきりは言えないけど、エゼルタの王様を味方にしちゃおうかなって考えたり?」




思わずポカンとするシオン。


予想外でしょうね。




でも政が絡んでいるというこの一件。そして謀反を起こしたくない私。


私の二手目、三手目は最終手段に置いといて。




とりあえずこの一手で終わらせたい。






「私らしい奇想天外な策になるけど。もしかするとシオンの手は少し借りるかもね。」


「…エゼルタの王はとても懐柔できるような王じゃない。」


「シオンはもう少し私を知った方がいいんじゃない?」


「は?」




今回は戦ではないけれど。


そして苦手な政という分野ですけれど。







「道のないところに道を作るの、私割と好きなんだよね。」




私がそう言って笑うと、シオンは少し目を大きくする。



でもすぐに冷たい目に戻る。





「…絶対無理。」


「やってみなきゃ分かんないってー。」


「分かる。貴女だから言いますけど陛下は今療養中。面会も謝絶されてる。まず会えません。」





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