(二)この世界ごと愛したい
消火活動する人間が一人もいないことに気付いた。
私あまり街には行く経験なかったし、こんな火事現場に遭遇したことないけど。
あれ?消火しない感じ?
「…あの…これ、消火は…?」
「いや、これだけ燃えてたら今から消火しても…な。」
「え?でもこのままじゃ燃え広がるだけでは?」
「…家はまた建てればいい。この家の家主も金はある。」
ちょっと待てい!!!
消火してくれないなら私はどうなる!?ずっとこのまま炎抑え続けるってこと!?
「今おーちゃん中に入って行きましたけど!?」
「オウスケさんなら大丈夫だ。きっと無事に戻って来てくれる。」
「はい!?」
「オウスケさんに出来ねえことはねえから。」
あるだろ、それなりに。
なんでこの街の人はこんなに諦めが早いんだ。
「…水!!!」
「え?」
「早く持ってきて!もう私がやる!!!」
「お、お嬢ちゃんが!?」
だって誰もやらないじゃん!!!
おーちゃん出てきた後、私が力を解除すればすぐに火の手はまた回る。
そうなったら後味悪いの私じゃん!!!
「おーちゃんが絶対無事だなんて何でそんなこと言えるの!?確約された命なんて一つもないでしょ!?」
「っ…!」
私は呆れるのと腹立たしいのと。
複雑な感情を抱えつつ、再度水の場所を問いただして消火にかかる。
「よいしょっ!」
私はバケツに一杯の水を抱える。
けど、集中が乱れたせいで燃える建物の炎の調整が難しくなり。建物の柱が一本崩れる。
…ヤバい。
おーちゃんごめんよー!!!
「…え?」
「お嬢ちゃんすまん!俺も手伝う!」
私が抱えていたバケツを、先ほど声を掛けた男性が代わりに抱えてくれて。
更に他の男性陣も集まって来てくれた。