(二)この世界ごと愛したい



私の今も存在感の大きい傷がある左腕を掴んだままのおーちゃん。


これに限っては戦傷じゃないんだけどね。




「…ハルが倒れたのは私を庇ったせいで。その穴を私が埋めるのは当たり前だよ。」


「当たり前…か。」


「当時はへこんだし、ここは地獄の果てかなって思えるくらい辛かったけど。」


「あー、せやな。」



せやなって、おーちゃん分かるのか?




「地獄の果てで、真っ暗闇の中戦い続けなあかん。立ち止まるのも休むのも全部がしんどくてずっと何かしとかな落ち着かんしな。」


「…あれ?同じ地獄の出身だった?」


「似たようなとこ経由しただけや。」


「そっかー。」



人生色々あるよねー。


あの生き地獄の経験者に初めて会ったなー。




「…あの?」


「…何や。」


「いつまで掴んでるの?」


「…あ。」



私の腕を掴んだまま離してくれないので、私から遠回しに離せと伝える。


しかし、気付かせたのに…離さない。




「おーちゃん?」


「…俺は…。」


「うん?」





「…やっぱりお嬢は好きになれん。」





…そうでございますか。





「うん、いいと思うよ?」


「…悪かったな。」



そう言って、ようやく離された腕。


わざわざ不思議な報告をしていただいて、恐縮です。




「俺、今日は帰るってカイに言うといて。」


「分かったー。」



そう言って帰ってしまったおーちゃん。


けどカイの護衛の役割もあると思ってたから、勝手に帰って良いのかと少し疑問が残った。




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