(二)この世界ごと愛したい
無理なのかー。
判断に迷いもなかったなー。
「じゃあこの国では、おーちゃん不在でカイの護衛する時だけ帯剣するようにしようかなー。」
「おおきに。けどお嬢もう時期戦行くんやろ?」
「うん。」
「どっちが勝つと思う?」
セザール対ディオン。
その勝敗予測をカイに尋ねられた。
「そりゃアキト軍が勝つよー。」
「お嬢が手貸すのにディオンが負けるんか。」
「…地図ある?」
私はカイに地図を持ってきてもらって、分かりやすいように説明することにしました。
この戦は、絶対にアキト軍が勝つ。
何せ私が不本意に鍛え上げてしまったし、トキの作戦も少し聞いてしまってるし。
お互いそれなりに死者も負傷者も出るだろうし、どの程度で決着が着くかはほぼ読めている。
「私の予想では、トキはディオンの下方から侵攻を始めるの。そのまま北上すると思う。」
「ほんで?」
「ディオン兵じゃアキト軍の猛攻は止められない。トキは恩賞一直線に行けるところまで行きたいと思うだろうけど、下方中腹にお城があるでしょ?」
「あるな?」
「ここで私がアキト軍の足を止める。」
諦めてくれればそれで良し。
諦めなければ根比べ。
つまり、トキと私の意地のぶつかり合い。
「それお嬢は大丈夫なん?」
「幸い向こうに私のことを好きなアキトがいるからね。心配で心配で見兼ねたアキトがたぶん止めてくれるから平気ー。」
「…悪い女やなー。」
読みが鋭いと言ってください。
けど、アキトの気持ちを大いに利用した悪女極まりない策には違いない。
「私もアキト相手にしかこんなこと出来ないよ。」
そんな私を見て、きっといつものようにニヒルに笑うところまで読めていますよ。