(二)この世界ごと愛したい
一通り戦の説明を終えた私。
それからしばらく地図を眺めて考えているカイ。
「お嬢、もう一個の戦場も読めるか?」
「いやーそれは難しいなー。勝敗しか分かんない。」
「勝敗分かるんが凄いやん。」
「読まなくても分かるよ。絶対にハルが勝ちます。」
これは決定事項です。
「これに関しては根拠はなさそうやな。」
「えーカイはハルが負けると思うの?」
「そうは思わんけど、敵将もまた手強いで?」
「なになに、どんな人?」
私はここで初めて、ハルと敵対することになるソルの第一将リュウキさんについて知ることになった。
カイに聞いた話では、傍若無人の極悪非道。
そんな碌でもない人間性だけに留まらず、残忍なその性格は凄まじいもの。聞いてるだけで耳が痛くなるような話だった。
…奴隷制度。
そんなものを作り上げた愚将の極みにいる男。
「…私絶対嫌いだなー。」
「俺も嫌いや。」
「ここにも来る?」
「来えへんし来ても会わへんよ。あんなの客にしたら命いくつあっても足りひん。」
カイの命は一つで充分ですよ。
来たら速攻で焼滅させてしまう自信ありますもん。
「…私そんなのに狙われてたのか。」
「ここは大丈夫やで。ソルの客もおるけど、決まった人間しかまず王都には入れんし。」
「あれ?私入れたけど?」
「俺が雇っとる人間は大体出入り出来るようにしてあるから、たまたまお嬢は素通り出来ただけやで。」
ますますカイの技量は凄いと思う。
王族にツテでもあるんじゃなかろうかとさえ思える。おーちゃんと仲良い時点で、本当にそうかもしれないけども。