(二)この世界ごと愛したい
「…色んなお話聞けて楽しかったー。」
「お嬢は楽しめると思ったわ。」
今日聞いた話を頭の中で纏めつつ、カイと話しているとそろそろ私も眠たくなって来た。
「お嬢、眠いなら上行って寝ててええで。」
「んー…。まだ飲んでるー。」
「いや、もう空やん。」
そんな私のグラスもテキパキとカイがお片付け。
すぐに綺麗になった店内で、もう酔い潰れたかの如く結局すぐに眠ってしまった私。
「…寝てるやん。」
カイが微笑ましそうに笑いながら。
残りの片付けを終えて、そんな私を眺める。
「さて、どないしよか。」
眠ってしまった私をどうしようかと。
カイは少し考えた後、店の外に出てここを護衛している人に声を掛ける。
「俺今日は店泊まるわ。オウスケおらんから、後は任せるな。」
それだけ伝えてカイはまた店内に戻り、私を部屋に寝かせるため抱き上げる。
「…手の掛かる子ほど可愛いってほんまやな。」
ボソッと呟いて私がお借りしてる部屋のベッドにそっと寝かせてくれて。
ここには他にも部屋があるので、カイは他の部屋に移動しようと思ったものの動きを止める。
『…あの子に重ねてる?自分が手に入れられなかったからオウスケまで巻き込むの?』
ワカさんの言葉が過ったカイ。
「…重ねてるんかな。」
私の側に引き返したカイは、そっと髪を撫でて。
隣にごろんと横になる。
父親と子くらい歳の離れた私の隣にいる自分を自嘲して、カイは目を瞑る。
「この宝物は、しっかり守らなあかんな。」
それでも今はと。
私の面影に浸りたいカイはそのままここで寝ることにしたようで。
…このまま朝を迎えることになった。