(二)この世界ごと愛したい
「なっ…何してんねんっ!?!?」
朝から五月蝿い声が聞こえる。
それは昨日護衛を放り出して一人帰ってしまったおーちゃんの声。
まだまだ全然眠い私の瞼は重く、そんな声が聞こえても開けない。
「…オウスケ、おはようさん。」
「かかかカイ!?なんでお嬢と寝てるん!?」
「…朝から元気やな。お嬢起きれるか?」
「……や。」
一文字返すので精一杯です。
それをきちんと否と受け取ったカイが、私の頭をまたそっと撫でる。
「さよか。ほなもうちょっと寝とき。」
口をパクパクと驚いているおーちゃんを連れて、カイは下に降りる。
「カイ!?どないなってんねん!?」
「…オウスケ、お前まず言わなあかんことあるんちゃう?」
「…仕事…飛んで悪かった。」
護衛すっぽかしてごめんと謝るおーちゃんに、カイは溜め息を吐く。
「せやな。他の人間にも迷惑掛けとったし、何よりお嬢が気にするやろ。」
「…カイはなんでお嬢にそこまで拘るん。」
「お前がおらん間、俺に何か起こらんようにって気張っててくれて。営業終わってからも先に休むのが忍びないって疲れてても待っててくれる子やで。」
カイの言ってることは事実で。
私は知らず知らずのうちに色々と気を回してしまっていて、それがカイにバレているのには気付かなかった。
「そんな子に冷たくするような男なんて男やめた方がええわ。」
「…それは俺に言うてる?」
「自分で考え。」
「…昨日火事があったんや。」
火事の報告を失念していたおーちゃんは、昨日の火事についての概要をきちんと改めて話すことになり。
被害者はおらず、建物のみが崩壊したことの被害状況を説明。