(二)この世界ごと愛したい



声を掛けられた女性たちは、血の気の引いた顔でおーちゃんを見る。




「お、オウスケさん…!」


「お嬢どこおるん?」


「っ…あの女は、オウスケさんには不釣り合いです!」



頑なに場所を言わない女性。


私に関する悪口をおーちゃんへ浴びせる女性たちは、何が何でも私を嫌わせようと必死らしい。



そもそも好かれてないので無意味とは知らず。





「あの女、こんなにお強いオウスケさんを馬鹿にしたんです!」


「そらけしからんな。」


「そうです!オウスケさんを誰が守るのかって、オウスケさんにはそんなの必要ありませんよね!?」


「…アホやな。」



おーちゃんが呆れたように溜め息を吐くと、女性たちは許してもらえたと安心して笑みを浮かべる。




「あんな女ほっといて私達と食事に行きませんか?」



そう言っておーちゃんの腕に絡ませた腕。




「…ほんま、ほっときたいわ。」


「そうですよね!私、ヒマリさんの代わりでもいいんです!是非ご一緒に…きゃあっ!」



そんな女性の腕を、おーちゃんが振り払う。




「オ…スケさん…?」


「…で、どこやねん。」



いつになく冷たいおーちゃんに震える女性たち。


こんなに怒っている姿を見るのが初めてだったのか、恐怖のあまりすぐに倉庫の場所を吐いた。





「俺はヒマリの代わりなんかいらん。一生忘れずに生きて行くつもりやで。」


「……。」


「苦しいもんは苦しいし。悲しいもんは悲しい。けど俺はそれでもええねん。」


「…は、はい。」



生き地獄のようなその場所で。


これからもずっとヒマリさんを想って生きていくつもりのおーちゃん。








「あのお嬢はそれでもええから、一人で戦うなって俺に言うてくれてるだけや。」




< 521 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop