(二)この世界ごと愛したい
声を掛けられた女性たちは、血の気の引いた顔でおーちゃんを見る。
「お、オウスケさん…!」
「お嬢どこおるん?」
「っ…あの女は、オウスケさんには不釣り合いです!」
頑なに場所を言わない女性。
私に関する悪口をおーちゃんへ浴びせる女性たちは、何が何でも私を嫌わせようと必死らしい。
そもそも好かれてないので無意味とは知らず。
「あの女、こんなにお強いオウスケさんを馬鹿にしたんです!」
「そらけしからんな。」
「そうです!オウスケさんを誰が守るのかって、オウスケさんにはそんなの必要ありませんよね!?」
「…アホやな。」
おーちゃんが呆れたように溜め息を吐くと、女性たちは許してもらえたと安心して笑みを浮かべる。
「あんな女ほっといて私達と食事に行きませんか?」
そう言っておーちゃんの腕に絡ませた腕。
「…ほんま、ほっときたいわ。」
「そうですよね!私、ヒマリさんの代わりでもいいんです!是非ご一緒に…きゃあっ!」
そんな女性の腕を、おーちゃんが振り払う。
「オ…スケさん…?」
「…で、どこやねん。」
いつになく冷たいおーちゃんに震える女性たち。
こんなに怒っている姿を見るのが初めてだったのか、恐怖のあまりすぐに倉庫の場所を吐いた。
「俺はヒマリの代わりなんかいらん。一生忘れずに生きて行くつもりやで。」
「……。」
「苦しいもんは苦しいし。悲しいもんは悲しい。けど俺はそれでもええねん。」
「…は、はい。」
生き地獄のようなその場所で。
これからもずっとヒマリさんを想って生きていくつもりのおーちゃん。
「あのお嬢はそれでもええから、一人で戦うなって俺に言うてくれてるだけや。」