(二)この世界ごと愛したい
移動しつつ、おーちゃんの話を聞きつつ。
私は少し想像してみた。
仮に私も戦で大切な人を失ったら、どうするだろう。
ハルは毒を受け眠り続けただけで命を落としたわけではない。でもあの時もし命を落としていたら…。
「おーちゃんは強いね。」
「どこがやねん。」
「私ならその立場を継いで、尚守る戦いなんて出来そうにないもん。」
「…元々俺は戦好きちゃうし。」
同じ地獄の出身だなんて、軽率なことを言ってしまったなと再度反省する。
「ここの王様、何考えてんのかな。」
「第一将には自分でなるって言うてん。別に無理に頼まれたわけちゃう。」
「だとしても、だよ。迷える剣なんて国に添えちゃいけない。」
「…辛口やな。」
迷わないように。
精一杯己を奮い立たせ、戦場に身を置き続けた私だからこそ、その先を知っている。
「…もうね、果てなんかないんだよ。自分が自分でもなくなる感覚と、漠然とした恐怖だけが残って。自分ではどうにも出来なくなるから。」
「俺はそれでもええねん。」
「私もそう思うよ。だけどたぶん周りはそうは思ってくれないの。」
「…確かになー。」
私も周りに散々心配かけた。迷惑もかけた。
それでも、目覚めたハルと支え続けてくれたるうのために出来ることを模索した。
「私の場合選択肢は三つだったよ。自分のことだけ考えてそのままでいるか、誰かの手を取って無理矢理引き上げてもらうか。」
「…三つ目は?」
「潔くヒマリさんを追い掛ける。」