(二)この世界ごと愛したい



おーちゃんの足が止まる。


止まるから私の足も自然に止まる。




「…お嬢は二つ目やろ。」


「うん。」


「俺は一つ目が理想やけど、それやと周りが迷惑するっちゅー話やな。」


「そうだね。実際カイがかなり心配してる。」



私はおーちゃんとヒマリさんの関係を見たわけじゃないし、恋愛経験もないので良く分からないけど。


最近一緒に過ごしていたサクとハナちゃんだと仮定すれば、それはそれは悲しいことだろうと想像しやすい。




「三つ目は俺の選択肢にはないな。そんなんしたら向こうでヒマリに怒られる。」


「じゃあ二択だね。」


「…けど…二つ目は、俺を守ろうとしてくれる人なんておれへんし。」




相変わらず立ち止まったままのおーちゃんに、手を差し出す。






「いないっけ?」


「……。」


「私も引き上げる側やったことないから手探りだし、やや強引でも良ければ。恐れ多いけど。」


「……アホか。」



プイッとそっぽ向いたおーちゃん。



ですよねー。


そりゃ年下のちんちくりんにそんなこと言われたって、何言ってるんだって話ですよねー。




「二つ目の選択肢を叶えてくれる人に、その内出会えるといいね。」



私は差し出した手を引っ込めて再び歩き出す。










「…そんなんいらん。」


「っ…。」




後ろから、そっと繋がれた手。






「…か、可愛すぎません?」


「お嬢に言われたないわ!!!」




照れながらも私の手を取ってくれたおーちゃんに思わず内心悶え苦しむ私。


可愛すぎるって!!!




けど、こうして選んでくれた以上。


私はどうにかおーちゃんを、その地獄の底から引き上げてみる方法を探して行こうと決めた。





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