(二)この世界ごと愛したい
それを見てカイがパチパチと瞬きをする。
「え?オウスケまさかお嬢のとんでもない倍率の争奪戦に参加する気なん?」
「カイ。」
「敵は全員手強いで?」
「それでも奪わな俺救われへんままやん。」
「自己中か。」
「お嬢が言い出したんやし。」
やれやれと呆れるカイ。
おーちゃんのこの子供と相違ない考え方は、まるで玩具を欲しがる子供のそれと同じ。
「やから、カイ頼むで。」
「俺かい。」
「お嬢ここに繋ぎ止めてな。」
「簡単に言うなや。てか自分の惚れた女くらい自分で引き留めるくらい言えや。」
「俺惚れてへんし。」
「あーもうええ。アホらし。」
惚れてないと言い切るおーちゃんを、また子供を見守るように見つめるカイ。
「オウスケは好きにしたらええ。お嬢のことも今のところは心配いらんし。」
「その辺は任せるわ。俺、もしどっかに掻っ攫われたらここほってでも取り返しに行くで。」
「それで惚れてへんってお前なんやねん。」
「お嬢は俺を守るらしいからな。しっかり守ってもらおう思てるだけ。」
おーちゃんがニッコリ可愛く笑うと、流石のカイも堪えるものがあり。
どうしてもまた甘やかしてしまうらしい。
「…お嬢はほんま、罪な女やな。」
嘆かわしい呟きが消えたところへ、昨日と似たような支度を終えた私が戻る。