(二)この世界ごと愛したい



「カイー、喉乾いたー。」


「…もう可愛いが大暴走しとる。」


「見て見て!この髪止め私が選んだの!」


「お嬢気い付けや。もうオウスケがえらいことなっとるから。」



えらいこと?大変なことってこと?


チラッとおーちゃんを見ると、ただじっと私を見ているだけ。



特に何を言われることもないので、昨日同様私はカウンターに座ってカイの飲み物を待つ。




「お客さんまだかなー。」


「もうぼちぼちや。その髪止めも可愛えな。」


「ありがとー。」



カイがお酒ではなく水をくれたので、私が首を傾げると起きてからほぼ飲まず食わずだったのでいきなり酒はダメだと怒られた。


言われてからそんなことに気付く私。




「とりあえず軽く食べ。お嬢は何が好きなん?」


「…アップルパイ。」



私がそう答えると。


カイは嬉しそうに笑う。




「ほな明日焼いたろ。今日は別ので我慢してな。」


「カイ優しいー。」



目の前に置かれた別の甘味物。


食欲は安定になかったけど、比較的甘い物が好きな私は自然と手が伸びる。





「カイ、ちょっとお嬢に甘すぎひん?」



ふわりと。


おーちゃんが私の背後から甘味物に手を伸ばす。




「っ!?」



盗られたことにも驚いたけど、まず何より…。



近いっ!!!




「…オウスケ。行儀悪いしお嬢ビックリしとる。」


「カイがお嬢誑かしてるからやろ。」


「…誑かすて。お前今まで気にも止めんかったくせに。」



と、とりあえず近い。


今までのおーちゃんでは考えられない急接近に、未だ固まるしかない。




「ほんでお嬢はなんで固まってるん?」


「…近い。」


「初心者相手は色々面倒やな。」


「ま、また馬鹿にしてる!?」




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