(二)この世界ごと愛したい
前にも聞いたことがある。
あれは婚儀の日。そのあと二人で離宮に泊まった翌朝のこと。
レンの人生で一番の幸福な日が更新されたらしい。
「そ、そんな嬉しいことあった?」
「うん。」
気にはなるけど、聞くのは怖い。
その先を聞いてしまうと、私はきっとまたレンに囚われてしまう気がする。
だからレンに向けていた身体も視線も、私は窓に向けて逃げる。
「…春眠暁を覚えず、だね。」
「俺そんなに良く寝てたかな。それにもうちゃんと起きてるよ。」
「まだ夢の延長線なのかと思った。」
「…確かに。」
夜が明けても、熟睡から中々目覚められないレンの世迷言かと思った。
だって、あの時も今も、レンが幸せだと思えるようなことを私はした覚えがない。
「夢か現実か分からないくらい綺麗だよ。」
「は?」
何が?何言ってるの?
レンの世迷言が続くので不本意にも再びレンに向き直った私。
そんな私をすかさずレンが抱きしめる。
「…レン?」
「いつもリンに似てると思って愛しくて仕方なかった光の中に、本物がいる。」
「なっ…!?」
「こんな夢なら一生見ていたいな。」
も、もうどこから…。
何からつっこめばいいのか分からん。
この暁色の光が私に似ていると。瞳の色がね。確かに少しばかり似ているのかもしれませんね。そして確かに本物…私もいますね。
…その光が愛しいと。
まるで遠回しに、私を愛しいと言われたような気分になってしまった。
「〜っ、レンは大袈裟すぎるっ!」
「大袈裟?」
「もう早く行きましょう!!!」
「あ、そうだね。準備するから少し待ってて。」