(二)この世界ごと愛したい
もう、お話になりませんね。
私はそう判断して、立ち上がりレンに早く行こうと声を掛ける。
異存ないレンも同様に立ち上がったので、変な空気にしてしまった酒場を静かに後にしました。
そして、パルテノン王都からまた馬車で適当に走らせてもらっている車内。
「レン、もう少し人目を気にしてくれるかな!?」
「どうして?」
「私が居た堪れないの!この後もどんな顔でお店に帰っていいかわかんないの!」
「気を付けるね。」
本当かよ!?
全然信じられないけど、今はそう信じるしかない。
馬車が拠点で止まったので、降りた後はまた空中散歩に切り替える。
「王宮で何するの?」
「スーザンに報告があるだけ。」
「…仲直りしたの?」
私が王宮にいた頃は、仲が良いとはとても言えない間柄だったように思うから。
完全にスーザンが悪いけど。
「仲違いしてたって感覚も俺にはないから。今は必要があれば普通に話す程度だよ。」
「そっか。」
「でも、以前と違って自由に仕事させてもらってるから。感謝しないとね。」
「…相変わらず人がいいね。」
本当なら怒っても恨んでもいいだろうに。
そんなこと思い付きもせずに、ただ感謝せねばと思えるその綺麗な心が素晴らしい。
「リンほどじゃないよ。」
そうあっさり笑って言えるのも尊敬する。