(二)この世界ごと愛したい
「リンが間に入ると、勝手に情報操作しちゃいそうだから。」
「…信用ないなー。」
情報売買についての呑み込み早いな。
本人たっての希望なら、もう自己責任でいいか。
「俺はこの世界で、リンより信じられる人はいないよ。」
い…いちいち大袈裟な発言がなければ。
私の心もまだ平穏でいられるのに。
とんでもないぶっ飛んだ発言を、公にされてしまうもので。私は思わず俯いて顔も上げられない。
「…王子ってアホなん?」
「こら、オウスケ失礼言うな。」
「人前でド直球に恥じらいもなくそんなん言えるん凄いやん。」
「それ褒めてんのか貶してんのか分からんわ。」
いや、おーちゃん。
実は私もかなり前から同じ思いなんだ。
「悪いけど、お嬢は俺の救世主になるらしいから。今は王子に渡されへんよ。」
宣戦布告とも取れる。
そんな言葉を、今度はおーちゃんがレンに投げる。
それを聞いてカイが思わず、よく言ったと言わんばかりに嬉しそうに笑っている。
「うん。リンはきっと救世主になってくれると思うよ。」
「は?」
「ん?」
「…やっぱアホか。」
レンの天然におーちゃんが頭を抱える。
そうなんです。この天然さがレンの厄介なところなんです。正攻法が通じないんです。
「だけど救ってもらった後でも、きっと同じやり取りをすることになりそうだね。」
「…え?」
「リンは麻薬と同じ。知れば知るほど、近付けば近付くほど、離れられなくする人だから。“今は”って話じゃなくなるよってこと。」
「ほ、ほんまか!?」
怯えたようなおーちゃんの声に、私は堪らず顔を上げる。
「そんなこと私しないよっ!」
「現に俺にしてる。」
「言いがかりです!私は至って普通に生きてるだけです!」
「普通に生きてるだけで可愛いもんね。」