(二)この世界ごと愛したい
唇が離れる頃には、私はもう立ってもいられない。
崩れ落ちそうになる私をレンが支えるようにまた抱きしめる。
「…ごめん。」
「っ…な、に…。」
さっきから謝っているが、何に対しての謝罪なのか分からなくて。
それを聞きたいのに、息が上がって聞けない。
「困らせたくないし、嫌がられたくもないし。リンを尊重して…って、自分に言い聞かせて言わないでおきたかったけど。」
抱きしめる腕が、更に力を強める。
「本音を言うと、もう一瞬も離れたくない。」
「…れ…ん。」
「俺の決意なんて、リンの前では無意味だね。」
「……。」
レンは、軍人じゃない。
王族だから自由に国を行き来できないし。医術師だから自分本位に患者さんから離れて移動も難しい。
だから…そう言うことにしてほしい。
「…言って。」
「え?」
「嫌…じゃないから、尊重もしてくれなくていいから。私はいつも、ありのままのレンの言葉が…結局嬉しいの。」
そんなことに、今更気付いた私は。
レンの腕から抜け出して、部屋にある恐らく調薬に使うフラスコに炎を注ぎ込む。
「…出来るだけ、会いに来るけど。もしレンがまた会えないことを苦しいと思ってくれるなら。この炎が消えた時、飛んで来るね。」
「え?」
「これがあれば、もう暁の光を待たなくていいでしょ?」
「…え?」