(二)この世界ごと愛したい



驚いている様子のレン。


私に会えずに過ごしていた時、わざわざ日出を見学していたらしいし。そんな時間があるなら、少しでもレンに休んで欲しいし。




「これからも沢山の人の命を助けるんだから、私が足引っ張れないよ。レン自身がちゃんと元気でいてね。」


「…あー…うん。」


「…いらないなら…別にいいんだけど。」


「いや、ごめん。現実味なくて…。」



さっきからはっきりしない返事ばかりのレンだが、現実味がない…とは?




「あんまり嬉しいことばっかり言われるから、都合の良い俺の夢だったらどうしよう。」



あーもう。


そんな大したこと言ってないし、してないのに。


それを夢のようだと言うレン。これが逆に私を嬉しくさせる要因だと、本人に自覚がないのが困る。




「と、とにかく。この炎は水じゃないと消せないから!それにあんまり高頻度で呼ばれると周囲の目を引いちゃうから程々に!私絶賛追われる身なので!」


「うん。」


「バタバタしてたらクロにお手紙運んでもらって、行ける日伝えるようにするね!」



そこで思い出した私は、カイの鷹とクロの二羽にこの城の場所を覚えていただくことにして。


終わり次第、再度レンに目を向ける。




「じゃあ、私お店に戻るねー。」


「…うん。」



また窓から飛び立とうと窓枠に手を伸ばす。


伸ばしたけど、何気なくもう一度振り返ってみたくなった。




「ん?」



首を傾けて、優しく私を見つめたままの瞳がやっぱり綺麗で。


…麻薬はどっちだと本気で思った。




「またね、レン。」


「リンも気を付けてね。」



こうしてようやくレンの城から出て。


私は再びパルテノンへ立つ。




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