(二)この世界ごと愛したい



やめてください、トキさん。


これ以上この邪狼を付け上がらせないでください。




「…違います。」


「ここと、ディオンの追手が来なくなったらしいよ?」


「へー。」


「リンが頼んだんでしょ?」



全てトキにはお見通し。


だが、本当に目的はシオンのためではない。




「別にシオンのためじゃないし。元を辿れば私が悪いんだし。」




「じゃあ、シオンが誰かを傷付けるのを見たくない、リンのため?」


「っ…!」



トキと一緒に過ごしすぎたせいか。


恥ずかしいくらい筒抜けで、思わず分かりやすく動揺してしまった私。




「リンは可愛いね。」


「ちっ、違うの!私は別にっ…!」



そんな私をグイッとトキから奪還したのは、言うまでもなくシオンで。




「トキ退け。」



大事な弟さえも押し退けて私を抱え込む兄。


…この兄弟は、本当に厄介だ。




「貴女に借りを作る気はありません。」


「お言葉ですけど作った覚えはありません。離して。」


「追手もどうせ弱いんで。」


「あーそれは余計なことしてすみません。離して。」



もう完全にわざと、割とキツめに離してと訴えるが。


この性悪はやはり離さない。腰に回された腕はガッチリと固定されてびくともしない。




「…ちょっとカイ。傍観してないで助けて。」


「いや、そんな野暮出来るかい。」



この野郎。


身体が怠いのは何も変わっていない私は、今は為す術なく大人しくしていることしか出来ないでいる。




< 749 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop