(二)この世界ごと愛したい
「もう良い加減離してよ!?」
「お断りします。」
「大体来るの早くない!?三ヶ月に一回じゃなかったの!?」
「トキの用なんで。」
「じゃあトキだけ来れば良かったんじゃないの!?」
睨まれるが知らん!!!
私はしんどい!!!
「アキトが来られないから俺が誘ったの。そしたらリンがいるって言うし。リンを怒らないでって牽制されるし。」
「してない。」
「してたって。」
兄弟喧嘩は他所でやれ!!!
怒りが溢れ返りそうな私だが、僅かに空気の変化を感じ取る。
「カイさんっ!!!」
それは、突然お店に押しかけた情報伝達の人と共に。
「どないしたん?」
「き、鬼人戦の…最新情報です。」
また一枚の紙を受け取って、それを読むカイの表情が曇る。
「…シオン。」
何かあったことは一目瞭然の状況に、流石のシオンも大人しく私を解放する。
私はその紙よりもまず、お店の外に出る。
やっぱり空気が変わっている。ハルの戦時にしては珍しく突如発生したと思われる曇天が広がるソルの方角。
「生きてる、ね。」
その方角に耳をすませば。
ハルの音はちゃんと聞こえるのが分かる。
大丈夫だと自分に言い聞かせて、私は再びお店に戻りカイの手から最新情報が書かれた紙を抜き取る。
一文だけ書かれたその紙を。
『忍軍との交戦中、鬼人は行方不明となりアレンデール軍が敗走。』
いつもなら、閉ざされた城の中で。
私にとって都合の悪い情報は遮断され、ただ勝報とハルの帰りを待つだけ。
外の世界とは、こんなにも心を痛めることもあるのかと。今更思い知る私はやっぱり、所詮は世間知らずの愚かな姫だ。