(二)この世界ごと愛したい
「おーちゃん安心した?」
「…何がやねん。」
「顔険しいよー。」
「…お嬢っ!!!」
思わずビクッと震えるほど突然。
おーちゃんが私の両肩を掴んで強引に巻き合わせる。
「今すぐソルまで行き。」
「…え?」
「鬼人のとこ。」
「…行かないよ。」
何かと思えば。
ハルの戦場へ赴けと言われる。
そりゃあ行きたいよ。心配だし、戦況意味分かんないし。
「後悔したないやろ。」
「それで言うと、私の場合は行っても後悔するもん。」
「…確約された命なんてないねんで。」
知ってるよ。
私もいつもそれを憂う。
「もうソルからの追手が引っ切りなしなの。徐々に数も増えてるし。」
「は?」
「…せめて、この追手用に準備されてる兵くらいハルに向けさせないように私は精一杯気を引きつけるの。何ならもっと引きつけたいところなんだけどね。それやるとここも無事じゃ済まなくなるからやらないけど。」
「お、お嬢お前…どこまで…。」
どこまで考えているのか。どこまで身を削るつもりなのか。どこまでハルのために動くのか。
その全てを考えただろうおーちゃんに、私は出来るだけ笑う。
「これ、私の常套手段だから。私に目を向け過ぎると、思ってもない方向からあっさり討たれる敵を嫌ってほど見てきたからね。」
「…お嬢…。」
まるで子ウサギの様に、耳が垂れる幻覚さえ見える。
それくらい悲しそうに眉を下げるおーちゃんが、堪らなく可愛い。