(二)この世界ごと愛したい



そこはご想像にお任せします。




「ところで、このベルトは何ですか?」


「え…ああ。トレーニング用の装具で、筋トレせんでも十倍の効果が得られる代物や。」


「お兄様がご考案を?」


「まあ、そうやな。」



ほうほう。


その効果はまだ未知だが、これは上手く軍事に使えないだろうか。検証が先か。




「失礼ですが、お金に困っていらっしゃるようには見えません。何かご事情が?」


「お嬢ほんま失礼やな。兄貴は昔から女子供に見境ないねん。誰彼構わず相手して浪費するから永遠の貧乏人なんや。」


「…ハニーもかなり失礼やで。」



人も良さそう。パルテノンと揉めてここにいるとは考えにくい。


ってことは、パルテノン側の間者か。だとしたら王都に近付けすぎるのは逆にパルテノンに情報を与えすぎてしまう可能性もあるな。


…今は静観でいいか。




「てか、お嬢さんは何で俺に敬語なん?」


「…あ。無意識でした。」


「てっきりハニーが自分の好きな子紹介に来たんやと思ってたけど、ハニーの片想いみたいやし。」


「かっ、俺はそんなんちゃうわ!!!」



この装具も良く分からんが、とにかくここは早めにその十倍の力がほしい。




「じゃあおーちゃんのお兄さん。」


「よーちゃんで!鬼人には内緒で!」


「…よ、よーちゃん。」


「グハッ…!!!」



またもや鼻血が噴水のように溢れる。


致死量でないことを願います。




「く、悔いはない…っ。こんな可愛い子に…人生の幕下ろしてもらえて寧ろ幸せや…。」


「アホ言うてないで剣も早めに頼むで。」


「任せとき、ハニー…。」



鼻血が止まらないお兄さんを店内に残し、おーちゃんがまた私の手を引いて。剣の修繕が済むまでお世話になる宿まで連れて行ってくれた。


これまたるうと一泊泊まった宿と同じ。


そしてこの宿の人には私の顔は知られてしまっている。




「おーちゃん、私ここの人に姫だってバレてる。」


「まあそんなこともあるわな。これ被って大人しくしとき。」



おーちゃんが着ていたコートを私に頭から被せ、そのまま抱き上げる。




「いらっしゃいませ。」


「二部屋借りれるか?」


「かしこまりました。お食事はいかがされますか?」


「一緒に食べるわ。俺の部屋に運んでくれるか?」



こうして、顔はバレることなく。


お部屋に案内していただけて、お隣同士の部屋なので迷うこともなさそう。



一つの部屋にまず二人で入った。




「バレへんかったな。俺先風呂入るわ。お嬢この部屋おり。俺隣使うわー。」


「あ、うん。」



私を部屋に下ろして、おーちゃんは疲れたと言いながらさっさと退室。


私も冬の寒さで冷えた身体を温めようかとお風呂に入ることにした。学習能力は向上しているので、別室に用意されていたルームウェアをきちんと持って浴室へ。



しかし、お風呂を貯めるのを待つ時間が面倒になり結局シャワーで済ませて部屋に戻る。




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