(二)この世界ごと愛したい



「ご迷惑おかけしてすみません。」


「別に迷惑ちゃうけど。」



なんて可愛いの。


そしてなんて優しいの。




「お兄さんも良い人だったね。」


「…お嬢にとっては、他国からの流れ者でも自国の人間なんやな。」


「そうだねー。どこから来たのかは関係ないかな。七つもある国の中からわざわざ選んでもらって、善良に生活してくれるなら王族として礼は通したい…と思う。」


「立派すぎて感心するわ。」



王族は忘れてはいけない。


王族だけでは生きていけない、成り立てない。民に生かしてもらっているんだ。




「今日、お嬢がやけに姫っぽくて。知らん人間に見えた。」


「そう?」


「俺はお嬢のこと理解出来てへんかったんやなって思った。」


「人が人を完全に理解する日なんて来ないよ。目に見えるものじゃないし。」



長年一緒に過ごして来たハルやるうのことさえ、時に見失いそうになることもある。


だから人は言葉を紡ぐ。目に見えない想いを言の葉に乗せて届ける手段を取る。




「それでも俺は、知らへん間にお嬢を傷付けるんは嫌や。」


「…うん?」


「つ、つまり…。その…教えてほしいねん。」



何を…???


私のことを?私の何を?


ん?私も自分のこと良く分からないぞ?あれ?何を教えたらいいんだ?




悩む私の耳に、ドアをノックする音が届く。


たぶん食事が届いたんだろう。




「お嬢、隠れとき。」


「…このままでいいよ。」



私がそう言ったので、おーちゃんは不安に思いながらも宿主さんを部屋に通す。




「失礼いたします。お食事を……え?」




< 777 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop