(二)この世界ごと愛したい
どうせ情けない顔をしているに違いない。
「とりあえず落ち着け、な?」
「……。」
「俺別に交際申し込んだわけでも結婚申し込んだわけでもないやん。」
「…うん?」
それでは私にどうしろと?
「それにヒマリを完全に忘れたかって言われるとそうでもないし。」
「あ、そうなの?」
「何ほっとしてんねん。お嬢に気持ち行きかけてんのは事実やで。」
「っ〜…うー、もう離して…。」
思いっきり顔を背けたくても出来ない。
私はそんなに恋愛達者ではないんですよ。逃げ出したいんですよ。
「やからとりあえず、俺がおる間は守るでって話をしたいのに。何で俺はキレられたんや。」
「ま、守らなくていいよ!おーちゃんはカイをしっかり護衛してて!私大丈夫っ!」
「一人増えても手間は変わらんし。」
「かっこい…じゃなくて。本当に私のことは気にしないで。」
この状態で褒めてどうする。
学習しろ、私。
「俺は戦場にはそんなに行かへんし、上げた武功もたかが知れてるけど。おたくの鬼人にも白狼にも、簡単には負けへんと思うで。」
「…え?」
ハルとシオンに…負けない?
この可愛いおーちゃんが?
確かにシオンは、珍しくどこかおーちゃんを警戒しているように見えた。
「俺の剣に着いて来れる人間は、もうこの世におらんから。」
たぶん、ヒマリさんのことなんだろうと思った。
「それをお嬢に教えるんやけど、俺の弟子やし。やから大人しく守られとき。」
「…ず、るい。」
そんな格好良いこと言われたら、断るわけにはいかないし。
…胸が鳴るのも仕方ない。
「ずるいんは俺なん?」
顔に添えられたままの手を、そのまま引き寄せられて。
唇同士が優しく触れる。
「簡単に二人きりになって、またそんな無防備な格好で、人に手足差し出して。挙げ句の果てには襲って下さい言うてるような顔して。」
「しっ…してな、いっ。」