(二)この世界ごと愛したい



この身体能力は、最早神技だ。




「あー焦った。」


「…捕まえたから私の勝ち?」


「は?あーそうやな?こんなにあっさり捕まったん初めてやわ。」



焦ったと言う割には全然そんな風に見えないおーちゃんが、楽しそうに笑う。




「俺がおる場所分かったん?」


「え、あ…うん。」


「ほんで待ち伏せか。作戦としてはええけど稽古としてはあかんな。かけっ子にならへんやん。」


「…ごめんなさい。」



そうだった。


走りもせず飛び出しただけ。何をしてるんだ私。




「けど、その瞬発力は褒めて然るべきやな。身体動かんやろ。」


「うん。」



ここを乗り越えなければ、力は手に入らない。


ならば私は、意地でも掴みたい。




「おーちゃん。」


「どしたん?」


「大丈夫だから降ろしてー。」



言われた通り、私をその場に下ろす。


そして私は人通りがないのを良いことに、手元に残っている剣を抜く。




「ちょっとだけ力借りるよ、るう。」



…何が何でも追い付いてみせるから。


いつかまた二人で、まだ、隣で戦えるように。




「お見苦しいけど許してね。」



私はその剣で自分の腕を斬り付ける。



この痛みで、重さが緩和された気がするのは大きな勘違い。ただ思い込みたい。


戦場を思い出したかった。ここは痛かろうが辛かろうが、逃げられない戦場だと思えば、退路はない。





「よし。」


「何がよしやねん!?何してんねん!?」


「あ、止血だ。」



そんなに深くは斬ってない。


ただ気合いを入れ直したかっただけなのに、おーちゃんが心配するので一瞬だけ炎で止血する。




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