(二)この世界ごと愛したい
「…おいコラ、トキ。」
宿に着くとすぐにアキトの不機嫌そうな顔が見えた。
いつもは恐怖対象であるトキにさえ、若干の怒りを含んだ雰囲気。
「あれ、思ったより早かった。」
「っ〜…!!!」
私は絶賛トキに虐められていました。
それはもう、到着次第すぐに床に組み敷かれ。身体のあちこち触られ部分的に舐められ。もう限界でございました。
やはり、この兄弟は良く似ています。
「まーだ何にも吐かせてないのにー。」
「っも…、私帰るっ!!!」
「はいはい、もうしないから。てか出来ないから。アキト帰って来ちゃったし。」
「と…きっ…!?」
最後にペロリと私の瞼を舐めて、羞恥心と我慢から漏れ出た涙を拭い去る。
「泣かない泣かない。可愛いけど、あんまりその涙は多用しちゃダメだよ。俺じゃなかったら大惨事になるから。」
「私もうお嫁に行けないっ。」
「それは大丈夫。うちのアキトはどんなリンでも喜んで貰ってくれるよ。」
そう言う問題じゃありません!!!
珍しくアキトから未だに睨まれてますよ!!!
「ったく。」
「へ?」
「お前のその隙良い加減直せよ。」
グイッと引っ張り、私をトキから離したアキト。
いや、自分が寝起きの私に何したか忘れたのかと。そう言ってやりたかったが飲み込んだ。今は感謝だ。
「邪城の住人怖いっ!」
「言われてるよアキト。」
「お前だろ!?」
お二人ともです!!!
そう心の声を大にして叫んだが、ちゃんとアキトに目を向けると所々お怪我をしている。
「…それおーちゃん?」
「瞬兎やべえな!?マジで速えぞ!?」
「あんまりおーちゃんにこんなことさせないでよ。血の気の多いアキトや私とは違うんだから。」
「明日も誘っちまった。」