(二)この世界ごと愛したい
アキトは私の考えを読み取れる。
だから思ったことを素直に話している。
「剣を取れば何かを守って、策を練れば何かを繋いで、そこにリンの意思はねえよ。」
「……。」
「それを強引に開くなよ。また泣くから。」
「…ほんま難儀な奴やわ。」
アキトは遠くを見たままのおーちゃんに目を据える。
「惚れた女のことを、何でわざわざ俺に聞いたんだあ?」
「…“お友達”なら詳しいかな思て?」
「よーし、久々に腕が鳴るなあ。」
「あんま怒り立つなや。別に俺、横取りしよ何て思てへんから。」
新たな矛を掌に、既に構えに入ったアキト。
おーちゃんも渋々剣を抜く。
「戦嫌いの瞬兎とやれる日が来るとはなあ。」
「お嬢の前では言わんかったけど、鬼人が戦ったソルの第一将。たぶん鬼人も討ててへんから。」
「はあ!?」
「あれがお嬢を付け狙っとる内は、誰かが守るしかないねん。」
「…シオンも似たようなこと言ってたなあ。」
ここでも、またシオン。
あの先を見通す目は本当に凄いもので。おーちゃんはやはり話がしたいとより思うことになった。
「守りは多い方がええからな。」
「あ?」
「力任せな腕やけど、まだまだ伸び代やん。頑張りや。」
アキトを翻弄して躱しきって。
涼しい顔でけちょんけちょんにしたおーちゃん。
「ああ!?見えねえ!?」
「やたらお嬢が懐いとったけど、何したん?」
「懐かれてねえよ!あれは…っ!」
「あれは?」
双方武器を収め、アキトはバツが悪そうに呟いた。
「…ただの、人違いだ。」
「人違い?」
「とりあえず明日もう一戦頼む!もうちょいで見えそう何だよ!!」
「…ま、暇やったらな。」
おーちゃんは収穫があったのかなかったのか、微妙なところだがカイの待つ店内に戻り。
アキトもトキと私が先に向かった宿へ向かう。