(二)この世界ごと愛したい
そこを追ってきたカイが店内では暴れてくれるなと制止して。
危機一髪。命は守られたアキト。
「おいお前、月の姫ってのは何だ。」
「…リン。」
「お前の目は節穴か。」
「え?」
「俺のリンは御伽話のどこぞの姫より可愛いだろうが。」
この場の全員が呆然とする。
カイを追って店内に戻ったおーちゃんさえ、ハルの言葉にぽかんとしている。
「リンの可愛さに失礼だ。訂正しろ。」
「お前は存在が失礼だ。出直して来い。」
「馬鹿かてめえ。リンが月の姫に負けるわけねえだろ。そんなのが百人束になろうが絶対にリンの方が百倍可愛い。」
「否定はしねえ。けど馬鹿はお前だ。」
「俺はな、リンは天使だと思うんだ。」
「真面目な顔で何言ってんだよさっきから。」
大真面目に私を褒め千切るハルを、黙らせようとるうが粘るも止まらない。
そこに、ようやく身支度を済ませた私が戻る。
「コラ、リン髪の毛ちゃんと拭けって何回も言ってんだろ。」
「もう長くてやだ。るう帰ったら切ってね。」
「俺がどんな思いでここまで育てたと思ってんだよ。絶対切らねえ。」
ちゃっかりシャワーを浴びてきた私。
るうはそのことに気付いてハルを止めようとしたが、結果アキトが斬りかかったので言えなかった。
「ルイ、切れ。」
「は?」
「そして一房で良いから取っといてくれ。」
「…ハルお前キモイ。」
確かに、それは気持ち悪い。
「るうやっぱ切るの止める。」
「何でだよ!?」
「ハルが気持ち悪いから。」
「きっ…!?」
ズドーンと音がしそうなくらいオーバーに落ち込むハル。
その間るうが私の髪を乾かして。何ともいつもの感じの生活感に笑みが溢れる。