(二)この世界ごと愛したい




それはたぶん、野生的本能。


ハルに向けて振り下ろされるその矛は、荒々しくも猛々しい。





「…お前、酒は飲めるか?」



その矛を受けたハルは、また珍しくもアキトにお酒を飲もうと誘う。




「かっけー!!!」


「…ミスった。うるせえ奴か。」


「すげー!!!」


「……。」



ハルと剣を交えたことに感激するアキト。


鬱陶しそうに顔を歪めるハルだが、やっぱり嫌いなタイプではないと思っていた。




「ちょっとアキト、あんまり馴れ合わない方がいいって。」


「はあ!?トキお前何言ってんだあ!?」


「…あーもう。俺知らないからね。」


「男同士語り合うのに必要なのは剣と酒だぞ!?」




頓珍漢なアキトにトキは呆れるが。


ハルは楽しそうに笑う。





「面白えのがいるじゃねえか。今度うちに来い、たらふく飲ませてやる。」


「感動すぎる!!!」


「けどハル、こいつリンに手出してんぞ。」



せっかくの良い雰囲気をぶち壊したるう。




「…あ?」


「城出た時に言ってただろ。セザールに行くんだって。」


「セザールの…何だっけか。第一将の城にって…コイツか?」


「ああ。」



明るかった雰囲気は嘘のように、ハルがまた殺気立つ。


それはそれは般若の如き顔でアキトを睨む。





「俺のリンに、何したって?」


「…ナニモ。」


「セザールの第一将っていやあ、最近月の姫と結ばれたって話だったな?」


「……。」


「まさか俺のリンじゃねえよな?」


「……。」


「…ぶち殺す。」




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