(二)この世界ごと愛したい
るうが私を抱えたハルを追って酒場を出た後、残された人達の思いはそれぞれに前を向く。
「トキ、早めに百戦終わらせるぞ。」
「…簡単に言わないでよ。俺とりあえずエゼルタに帰るって言ったじゃん。」
「じゃあ俺がやっとく。」
「止めて。無駄に兵減らさないで。」
すぐに戦に出たいアキトと、シオンの安否確認のため帰国したいトキ。
アキトは昂った感情を抑える方法を知らず、そのテンションのまま大いに一人で盛り上がる。ハルパワーを貰ってしまったことで、トキの制止も意味を成さない。
「もう…。瞬兎さん悪いけどエゼルタ行きは少し待ってて。そっちも今は無理みたいだし。またこっちから連絡する。」
「堪忍な。」
「一応リンが戻ったら教えてね。俺戦場に居るかもだけど。」
「分かった。」
エゼルタ行きは延期となり、都合が良いのは寧ろおーちゃんなので素直に応じた。
そして、昂ったままのアキトと疲れた顔色のトキもセザールへ帰国。
「…何や疲れたな。」
「俺、今日も店閉めよ。」
「働けや。」
「喧しいわ。誰のせいで疲れた思てんねん。」
カイとおーちゃんはそれぞれに疲れていた。
ハルとおーちゃんの喧嘩が勃発しないか、気を揉んだカイは更に疲れていた。
「…お嬢は、どうなるんやろ。」
「オウスケ腹括れよ。逃げずにお前の気持ちを受け止めたお嬢から、お前が逃げたらあかんやろ。」
「…あー。白狼に会いたい。」
「恋する乙女か。本人前にして言うたら冷たい目で見られるで。」
おーちゃんは何となく感じていた。
自分の求める答えを、この世界で知る人間はシオンしかいないと。