(二)この世界ごと愛したい
翌朝、るうの声で起こされて目を開けると。
目の前にハルの顔。ハルの目は開いていて、ただ私を眺めていただけらしい。
「……はる。」
「ん?」
「……すき。」
「…ぅえ?」
寝惚けながらハルへの想いが漏れると。
ハルは素っ頓狂な声を出す。
「…お、はよ。」
「……。」
「っうぅ…苦しい。」
ハルが私をこれでもかってくらい強く抱き締める。
普通に苦しい。
そして、私の耳元に口を寄せる。
「…この馬鹿。来世まで待てなくなるだろうが。」
そんなハルの小さな呟きが私の耳を刺して、私の胸はより苦しくなった。
「は、ハル?」
「お前は少し可愛さを抑えてくれ!!!」
「え…ご、ごめん?」
さっきの言葉はなかったかのように、ハルはすぐに通常運転に戻った。
私の目は必然的に醒める。
「リン、コーヒー置いとくぞ。」
「ありがと。」
何も聞こえていないるうは、私のコーヒーを準備するとすぐに一度部屋を退室。
「……。」
「…早めに準備しろよ。今日は花見だ。」
「あ、うん。」
「準備出来たら裏山で待ってろ。迎えに行く。」
ぽんっと私の頭を撫でてから、ハルも準備のために部屋を出て行ってしまった。
…変なハルだったな。
私もさっさと支度に取り掛かり、コーヒーを飲みながら優雅な一時を過ごす。
またしばらく帰って来られないな。
「良かった、リンまだ居てくれて。」
「…ママ?」
そこへやって来たママ。
「もうパルテノンに行っちゃうんでしょう?」
「うん、ソル経由だけどねー。」
「パルテノン素敵な場所でしょう?」
「…あ、そっか。ママにとっては母国だもんね。」
巫女のママの生まれはパルテノンだった。
カイと行った神殿も、知っていることだろう。
「パルテノン王にはご挨拶したの?」
「ううん、変な王様みたいで私会ってもらえない…と言うか会わせてもらえてないの。」
「あの方もお変わりないのね。」
「ママ会ったことあるの?」
「ええ。まだパルテノンに居る頃だからかなり昔だけどね。とっても良い人よ。」