(二)この世界ごと愛したい
時に思うことはある。
イヴの言っていた通り、私の存在はハルにとって足枷ではないだろうか。私が居なければハルはもっと自分の幸せに手を伸ばせたんじゃないだろうか。
私はハルを不幸にしてはいないだろうか。
「行くぞ、リン。」
「馬車じゃないの?馬で行くの?」
「さっきルイにもその説明させられた。」
「だってハル疲れない?」
しかも一騎だから。
行きは私も乗せてだし、移動中寝ることも出来ないしハルしんどそう。
「…初めてだろ、二人で遠乗りすんの。」
「え、うん。」
「お前との遠乗りに、邪魔が入るのが嫌だったもんで。」
つまり、御者さんさえ邪魔だと言うのか。
「遠乗り…にしては遠過ぎるんだし。せめて私自分で乗るしもう一騎頼まない?」
「それも邪魔だ。」
何もかも邪魔だと言ったハルが、私を抱えて早くも馬を走らせる。
「せっかくのリンとの遠出。俺はお前をここから動かすつもりはねえよ。」
ハルの胸の中から動いてはいけないらしい。
そんなの困ると、言えるわけもないくらいハルが格好良すぎてどうしようか。
「誕生日おめでとう。」
「っ!」
こんなのはずるいと思います。
今世でも来世でも関係ない。こんなの、堕ちるなと言われてもきっと抗えない。
「あり、がと。」
「…可愛過ぎる。俺のリンは絶対に可愛過ぎる。」
口を開けば俺の俺のと。
そう言うハルを、私は昔から一度も制止したことはない。
私は生まれてからここまでハルに生かしてもらったから。ハルの言ってることは間違いじゃないから。間違いだなんて思えないから。
私はずっと、ハルのもの。
私もそれが正当だと思ってる。正しい主張だと思う。そしてそうであってほしいと望んでる。
「てか、お前その将印なんだ。」
「え?」