(二)この世界ごと愛したい



全く意識してませんでした。


完全なる無意識でした。


でも、間違いではない。恋愛的なことは置いといて。私はアキトの人間性が結構好きです。




「ルイにも言われたが、俺も油断は出来ねえな。」


「るうに何言われたの?」


「椅子取りゲームの話だ。」


「うん?」



え、何それ楽しそう。




「飛ばすぞ。」


「うんっ!」



そこからスピードを上げ、ソルから奪った土地へ向かう。


思えばハルと遠出なんて本当に初めてで。


てか私の場合、基本誰とでも初めてなんだけど。




こんな風にハルと世界を駆け抜けること。


それは正しく私が描いている夢の一片のようで。





「…夢みたい。」


「夢?」


「終わらない夢だといいのにね。」



こんなことを、日常に変えたい。


夢で終わらせたくない。




「お前は考えまで可愛いから困る。」


「…ハルさ、他所の皆さんの前でそれ言うの良い加減やめようね?」


「可愛いリンに可愛いと言って何が悪い。」


「将印だって見た人皆んな困ってたし。」




兄馬鹿で済む域を超えているから周りが困惑し、それを受けて私も困惑するんだが。


分かってもらえないなと諦めに入った私を、さらに抱き寄せる。




「俺は、お前がここにいること以外に興味はねえ。」


「…知ってるけど。」


「だからお前が俺以外の奴を大事にしてえ気持ちは、俺には分からん。」


「だろうねー。」



それは相容れないものなんだろう。


私とハルは、本当に兄妹かと思うほど似てないし。




「けど、俺はリンが大事にしてえもんは全部守りてえ。」



ハルは強いから。


それを叶えられるだけの力は既に持ってる。本人がその気にならないだけで。




「男は別だがな。」


「そ、そっか。」


「それで良いなら俺に全部任せろ。」



そう言って頼もしく笑う。


これだから、ハルが好きで堪らない。




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