(二)この世界ごと愛したい
何故かトキの顔が曇った。
だけど、それは一瞬のことで。次にはまたふわりと可愛く笑う。
「仕方ない。他でもないリンのためだしね。」
「ありがとうー!おーちゃんは別で変装させて向かわせるから、エゼルタの国門辺りで待ってて!」
「はいはい。レンのことは任せて。俺が着いてるから、リンが不安に思ってるようなことにはさせないよ。」
「うう、本当に助かるー。トキ大好きー。」
私の不安まで解消してくれるトキを、ぎゅっと抱きしめる。
「…死なないでね、リン。」
「へ?」
唐突にトキがそんなことを呟く。
その意味を、私は頭の中で考えて。瞬時に私の身の内事情を誰かが勝手に話したのだと察した。
「…私の命は、生まれたその日から私のものじゃない。」
「……。」
「だから死なないよ。変な心配かけてごめん。」
「…そっか。」
私を生かすも殺すも、ハル次第。
そんなハルは私が死ぬことを許してはくれないから。私はどうせ死なないです。
「俺もアキトが暴走しないように時間掛けれないから、すぐ戻るね。」
「うん。気を付けてね。」
そしてトキが先に準備をしたいと言うことで、部屋を退室。
レンにも準備が出来たら来てと伝えて、レンは頷いただけだった。
「本当は巻き込みたくなかったんだけど、ごめんね?」
「……。」
「…怒ってる?」
「……。」
何と、お返事もしてくれないレン。
何を怒らせたんだろう。いや待て。心当たりは結構あるぞ。
炎補填忘れてるもんね。そして先日往診に来てくれたお礼も言えてない。それどころかこんな傍迷惑な厄介事に巻き込んだ。
私だ。完全に悪は私にある。
「度重なる迷惑かけてごめっ…んっ!?」
唇を重ねられて、謝ることさえ許してくれない。