(二)この世界ごと愛したい
事実は全く違うものの、トキの機転は素晴らしい。
しかし、ユイ姫さんはそれを鼻で嘲るように笑うだけ。
「構わないわ。私はただこの女が気に入らないの。」
「相変わらず傲慢だね。自分より可愛いからって、そんなに僻むの醜いよ?」
「僻む…ですって?」
「あれ気に障った?シオンもいないらしいから欲求不満なの?その辺で誰か捕まえて来ようか?」
トキの意地悪はここでも流石なもの。
おーちゃんは謎の修羅場に巻き込まれてげんなりしている。性別違うから僻みの対象にはならないのに。
「今すぐここに連れ戻してもいいのよ?」
「俺に手を出すと必然的にシオンは離れてくよ?我慢出来る?」
「シオンは今家に閉じ込められてるの。バレなければ問題ないわ。」
「閉じ込められるって、シオン今度は何したの。」
トキはユイ姫さんが怒りから目を背けるように、上手に話題を転換。
その間におーちゃんに隙を見て外へ移動するよう密かに伝える。
「箝口令よ。今回ばかりは総司令頭に来たわ。まさかシオンに会えなくなるなんて思わなかったの。」
「箝口令?」
「例のアレンデールの落魄れ姫を捕えるんですって。あんなののどこが良いのか分からないわ。」
「…へえ。狙いはリンなんだ。」
そんなトキの言葉にユイ姫さんがピクリと反応する。
「トキ、少し会わない間に随分女好きになったのね。」
「なるわけないじゃん。」
「…今まで女に触れることも、名前を呼ぶこともなかったのに。」
「どの女も同じだよ。腐り具合は変わらない。」
そんなトキの毒舌にユイ姫さんは顔を顰めるが。
トキは反対にふわりと笑う。
「でも、確かにリンは別かな。」