「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき

迷子

週末。
私は久しぶりのフットサルの大会に出る。
大会と言ってもフットサル施設が主催の男女混合チームの大会。

私は織部美琴。
フットサルをする時の私はほぼすっぴん。
ゆるくパーマをかけた肩より少し長い髪は、いつもと違ってきっちりと低めのポニーテールにしている。162㎝の少しだけ高めの身長。
低めの鼻に普通の唇。二重の猫目。長くて濃い睫毛以外ごくごく普通。
趣味は大学から始めたフットサル。
男女問わずサッカー好きの集まった大学のフットサルサークルは楽しかった。
そのサークルで知り合ったのが、明石健だ。  

今、私を助手席に乗せ、この車を運転しているイケメンこそが、明石健、その人だ。
健は大学のフットサルサークルの先輩で同じ会社の先輩。 
この大会に誘ってきたのもこの男だ。

ーーー明石健。今も昔もかなりかっこいい男。

右肘を軽くついて運転する健を盗み見た。
少し捲った腕の筋がかっこいいと見惚れる。

「ん?」
見られたことに気付いた健が、チラリと私を見る。

二重瞼に大きな瞳は少し茶色を帯びている。
高い鼻。いつも微笑んでいるように見える口角の上がった口。
少しパーマがかかったダークブラウンな髪は
これから運動するにも、関わらずきちんとセットされていた。
王子様か?!と言いたくもなる見た目。いや、社のあだ名はすでに「王子」である。

そんな美男な外見なくせに性格は明るく元気で、誰とでも気さくに話し、社交的。

はっきり言って、もてる。
モテまくる。

そんな彼に片想いをして、もう七年。
確実に拗らせてしまっている。

「どした?」
優しい声に胸がキュンとする。

モテモテイケメン王子とこうやって一緒に車に乗ってフットサル場に向かっているんだよ?
キュンとしないわけがない。
自分が特別なんじゃないかって思ってしまっても仕方がない。
好きにならないほうが、おかしいと思う。

とはいえ、健の「特別な存在」は私でないことは知っているのだけれど・・・。

そう思うと少し胸がチクリと痛み、
「今日の試合、楽しみだなって思って」
と、誤魔化した。

そして、そっと窓の外に目を向けた。
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