「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき

言えた「おめでとう」

数日後の金曜日。

この一週間、健と話す機会がなかった。お互いに展示会前の忙がしさに追われていて、避けようとしなくても自然と関わることはなかった。昼休憩は会わないようにいつもと違って社食以外の店で食事を取っていた。


   ✳✳

そして、今日。
朝から社外にでていた健とは顔すら合わせていなかった。
こんなに話さないのは年末年始くらいで、自分から避けておきながら、寂しく思ってしまう。
とはいえ、このままじゃいけないよね。
次に話すチャンスがあったら、お祝いを言おう!よし!言うぞ!


   ✳✳

覚悟むなしく、全く健に会うこともなければ、がっつり残業していた。

仕事の区切りがついて、時計をみると、18時半までの就業時間なのにもう3時間以上過ぎていた。

もう少し進めておきたいが、展示会まで約一週間。
明日は土曜日だけど出勤が決まっている。区切りもいいので、もう今日は上がろう!
そう思って、隣の席で仕事をする山口さんに声をかけた。

「山口さん、今日中の仕事ってあとどのくらいある?」
山口さんは入社2年目。展示会の経験は今回が2回目。

「えっと...今日中のものは終わりました」
彼女は肩よりも少し短い髪を耳にかけながら返事をした。

「かなりあったのに頑張ったわね」
「ありがとうごさいます!」

「よし!じゃあ、残りは明日にして片付けよっか?」
「はい!織部さんも帰るなら駅までご一緒していいですか?」

「もちろん!」
「嬉しい~」
初々しい山口さんは頑張りやさんで、話すとほっこりする。


「それならごはんでも行く?」
「うー。行きたいですけど、明日もあるし。展示会が終わったらご飯に連れていってください!」

「うん。いいよー」
「やった!」

話しながらパソコンをシャットダウンする。

そして、机の上を片付けていると、
「お疲れ」
と聞きなれた声がする。

振り返ると、そこには健がいた。


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