「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
キョロキョロしていると、後ろから声をかけられた。

「どうかされましたか?」
!?
振り返るとジャージ姿の男性が、スポーツバッグを肩にひっかけて立っていた。

どうしよう!
この場所を聞いてみようか?
でもちょっと恥ずかしい。
一瞬悩んだが、このままでは会場に戻れない。

恥を忍んで、施設地図を広げた。

「すみません。迷ってしまって。
あの、今いる場所って、どこかわかりますか?」
地図をさしだした。
「ああ。迷子なんだね」
はっきりと『迷子』と言われて幼い子供のみたいで居た堪れない。

「ちょっと待ってね。えっとねえ・・・」
背の高い男性はバッグを長い足の間におろし、美琴の差し出す地図に顔を近づけた。
少し背中を丸める彼。
視界の情報から、私より頭一つ分以上の高い身長。
しっかりした背筋がTシャツ越しにわかる。
この人もスポーツする人なんだなと思った。

「今いるところはここだね」
地図を指さしながら言う。
「ここ……」
ってことはフットサル場は‥‥顔を上げてあたりを見渡し、どちらに行けばいいのか見渡す‥‥どっちに行けばいいんだろう……。

再び地図に視線を落とす。
「分かる?」
と背中を丸めたまま、頭と目だけを私に向けた。
目が合い、あまりにまっすぐでキラキラ光る黒い瞳にドキッとしてしまった。

「どこに行きたいの?」
「え。あ。と、えっと。フットサル場に・・・行きたいんですけど……どっちだか、わかりますか?」
「フットサル場?」
「はい。フットサル。室内の…です」

にこりと笑った彼は、
「それならちょうどいい。俺も行くから一緒に行こう」
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