「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
ごめん。
ごめん。
ごめん。
ごめん。
ごめん。

心の中で何度も叫ぶ。
大好きだった健から、こんな風に言われるなんて思ってもみなかった。

今まで健がくれていた愛情に気付いてなかった。

健と同じように今の関係が壊れるのが嫌で、勇気を出せなかった。

勇気を出して告白していたらきっと未来は変わっていたのだろう。


――――だけど。

健と付き合いたいっていう気持ちはない。‥‥もう、ないよ。
コウさんに出会う前だったなら、嬉しくてきっと健の胸に飛び込んでいったと思う。

でも、今の私が好きなのはコウさんだから。
一緒にいたいと思うのはコウさんだから。
健の気持ちには答えられないよ。
このタイミングで告白してくれた健の気持ちを思うと、胸が苦しくなる。


「ごめん、健。
私、ずっと健のこと好きだった。
でも、ごめんなさい。
こんなに好きって言ってくれてるのに…ごめん。
ごめんなさい」

顔は見えないけれど、健の視線を感じた。

「分かったよ。ちゃんとフッてくれてありがとな」
「…健‥‥」

「ほら、顔上げて」
健に促されて顔を上げる。
両頬を大きな掌で包まれる。
「あ~あ、結局、顔ぐちゃぐちゃじゃねぇか。
ハンカチは?って、俺が持ってたのか」

そっとそっと顔を拭かれる。

「泣かせてごめんな」

少し笑ったかのように感じて、伏せた視線を上げると、健と目が合った。

悲しそうな瞳に、口元だけ口角を上げて笑んでいるようにしている。
その口元が、悲しげな健の気持ちを強調しているかのように伝わってきてまた苦しくなってくる。

「まあなぁー。
磯ヶ谷さんだもんなあ。
俺から見てもかっこいいからな」

健は私の顔を拭きながらぼやいた。

「うん。・・・でも健もかっこいいよ」
「ははっ。慰めてくれてありがとう」

いつものように優しく微笑んだ。

「幸せになれよ」
「うん」
私はできる限りの笑顔を向けた。

「つーか、美琴その顔で電車乗るの?」
「う。やっぱりひどい?」

「かなりひどい。山口さんに頼む?」
「え?気付いてたの?」

「うん」
「あとは家に帰るだけだし、駅ビルのメイクルームで直すよ、自力で」

「今日は磯ヶ谷さんには会わないのか?」
「‥‥うん」

会えないとは言えない。
二人で立ちあがって駅に向かう。
駅はどっちだ?
普段来たことのない公園の奥だったから出口が分からなくなってしまった。
キョロキョロっとして自力で行くことを諦め、健の歩き出す向きに合わせて私も歩き出した。

「なあ美琴」
「ん?」

「今、駅の方向分かってないだろ?」
「……健が連れてってくれるから大丈夫だよ」

「あははは。これだから美琴は放っておけないんだよな。
行くぞ、こっちだよ」
「うん」


今度こそ私たちは駅に向かった。



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