「逢いたい」でいっぱいになったなら~私の片想いが終わるとき
「今も美琴が好きだよ。もちろん、恋愛対象として」

ええっ!?


「でも、健はいつだって花ちゃんの隣にいたじゃない」
「大学の頃の話だろ。
でも当時から花は兄貴の彼女だったから、そういうんじゃないんだよ。
それに美琴が社会人になってからは、俺の隣はいつも美琴だっただろ」

「それは、仕事だからでしょ。
それに健はいつだって私のこと妹扱いしてた」
「妹扱いしてない…とは言い切れないところもあるけどさ。でも・・・」

健は私を見つめた。
そして、ゆっくりと話し始めた。


「大学時代は、ただのフットサルの後輩だったんだよ。
でも、社会人になって俺の前に現れた美琴は綺麗なお姉さんになってて。
なのにしゃべると昔と同じように天然で、可愛くて。
必死に頑張って仕事覚えて、バリバリ働き始めて、後輩思いのいい先輩になって。
だんだん綺麗にかっこよくなっていっても、俺と話す美琴は昔のままで、可愛い美琴だった。
しっかり者のくせにすぐ迷子になるし、頑張りるくせに泣き虫だし。
気が付いたら美琴のことが『女の子として』好きになってた」

その目はいつもと同じように優しい。

「美琴のことを好きだと思ったから、これでも意思表示してたんだよ?」

「意思、表示?」

「休みの日に一緒に出掛けたり、飯食いに行ったり、頭撫でたり、かわいいとも言った。
好きでもない子にそんなことするわけないだろ?」

確かに…。
あれ、意思表示だったんだ…。
私はずっと妹扱いされてるとか、子供扱いされてると思ってた。

「美琴は照れて赤くなることはあったけど、恋愛対象として意識されてないんだなって何度も思ったよ」

健は、握りしめたまま手の中にあるハンカチをそっと奪った。


「これまでも好きだって言おうと思った。
でも、男として見られてないまま告白して、今の関係が壊れるのが恐くてなかなか言えなかったんだ」

そして、私の頬を伝う涙をそっと抑えるように拭った。

「…今更言われても…困るよ」
「まあ、そうだよな」

涙がボロボロと零れ、健はそれを優しく拭いている。


ずっっっと健は花ちゃんと付き合ってると思ってた。
二人とも大好きだったから、私は自分の気持ちに蓋をしてた。
それなのに…。
今更好きとか言わないで。

もう、私はコウさんと付き合ってる。


「私はコウさんと付き合ってるんだよ」
「知ってるよ」

「じゃあ、なんで好きだなんて言うの!?」
「それは……ごめん」

「美琴が磯ヶ谷さんと付き合ってるのは知ってる。
磯ヶ谷さんなら仕方ないとも思った。
だけど…やっぱり美琴が好きなんだよ」

ハンカチを頬から離し、私の瞳をじっと見つめた。
「困らせてごめんな」

その顔は困ったような、寂しそうな顔だった。

「でも、俺、美琴を離したくないから。
俺のこと一人の男として見てくれないか?
それでも磯ヶ谷さんの方がいいならちゃんと諦めるから。
今更遅いって分かってる。
でも‥‥美琴が好きだ。
好きだから、俺の隣で笑っていて欲しいんだ」


「うううぅぅぅぅぅぅ」
涙が止まらなくて私は両手で顔を隠し、俯いた。


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